経済学部は就職に有利?

経済学部の就職状況と他学部との違い

まずはデータを基に、本当に経済学部生は他の学部に比べて就職に強いのか見ていきます。
大学通信オンラインが発表した「2020年 学部系統別実就職率ランキング」の学部系統別平均実就職率によると、文系学部の中で経済・経営・商系の学部の就職率が高いことがわかります。

〈文系〉       2020 2019 2018 2017
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経済系        89,3 90,1 89,3 88,2
商・経営系      90,2 90,8 90,1 89,2
法学系        87,6 87,5 86,7 85,7
文・人文・外国語系  86,9 87,1 86,3 85,0
国際系        87,3 87,7 87,6 87,0
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〈その他〉
家政・生活・栄養系  93,5 93,7 93,7 92,7
看護・保健・医療系  92,9 92,6 92,7 93,2
福祉系        90,8 91,6 92,4 91,2
農学系        91,6 92,4 91,7 90,9
薬学系        85,0 87,6 86,0 84,8
理工系        92,4 92,4 92,3 91,5
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文系以外の家政・生活・栄養系や看護・保健・医療系、理工系など、専門性の高い学部の就職率には及びませんが、全体として就職率の良い学部であることは言えそうです。
 

経済学部生だから就活は余裕!…ではない?

しかし、経済学部生だから普通に就活していれば受かるでしょ!と余裕を持っている場合ではありません。なぜなら、2020年時点で全国に学部生が約263万人おり、そのうち経済や商学を学ぶ学生は全体トップの約46万人います。2番目に多いのが約16万人の人文科学系ですから、飛びぬけて経済学部生は多いことがわかります。
それだけ経済学部出身者がいるということは、同じような学問を学び、同じようなことに興味を持ち、同じような業界を目指す人が多いということです。それゆえ、就活において経済学部生は他との差別化や、万全の対策が必要です。「経済学部出身」の看板に頼ることなく、就活対策をしていきましょう。

参考:ナレッジステーション 大学 関係学科別学生数(令和2年度)

経済学部は就職に有利?

就職における経済学部のメリット

就職率が高く学生数も多い経済学部ですが、就活におけるメリット、なぜ就職率が高くなるのかを考えてみましょう。
 

入社後に直結する内容を学んでいる

経済学とは、経済の仕組みや経済活動の流れを学ぶ学問です。例えば、個々の消費者の消費行動や、政府の景気政策、企業の利益を最大化するための取り組みや、銀行の貸付行動など、個人から企業、政府などのあらゆる場面での経済が含まれます。
ビジネスの基礎となるような経済の骨組みや、今現在おこなわれている経済の動きまで、あらゆる視点で経済活動について勉強するため、入社後仕事をするうえでの理解が早くなるのがメリットです。

また学んだことが直接仕事に繋がらなくても、大学の講義やゼミ活動などを通して様々なビジネスシーンに触れる機会が多いため、ビジネスをすることへの探求心や意欲が他の学問を学ぶ人よりも強い傾向があります。就活前から、ビジネスへの興味が強いことは志望動機を考えるうえでもメリットですよね。
 

様々な企業で求められている

世の中にある会社はどの業界の企業であっても「いかに利潤を増やすか」ということを追求しています。そこで重要なのが経済学の知識や数学的な思考力です。新入社員にそのような知識を使って、経営に関わるようすぐに求めることはありませんが、大学でもともと経済学や数学的思考を身につけている人材がいるのであれば、これからの成長を見込んで企業は欲しいと思うはずです。業界を問わず、様々な企業で求められていることも、経済学部の学生の就職率が高い1つの要因です。

就職における経済学部のメリット

【業界編】経済学部の主な就職先

では、実際に経済学部の学生が就職している業界はどこなのか、そしてそれぞれの業界のどんなところが、今まで学んだこととリンクするのか見てみましょう。
 

①金融業界

【平均年収データ:全体/448万・男性/540万・女性/370万】
経済学とは切っても切り離せないのが、銀行、証券会社、保険会社などの金融業界です。
個人や企業など規模も様々に、国内海外とあらゆる範囲のお金の流れに関わる仕事です。経済学部で学んだことと仕事が密接に繋がっているほか、学んだことが実際におこっているシーンで働ける面白さもあるでしょう。
年収も比較的高く、特にメガバンクや外資系証券会社は毎年人気の就職先です。ただ利潤を追求する力が強いため、ノルマを達成するためのプレッシャーに耐える力や仕事に対する熱意が強くないと仕事が続かないのも特徴の一つです。
 

②商社業界

【平均年収データ(総合商社):全体/446万・男性/487万・女性376万】
【平均年収データ(専門商社):全体/406万・男性/443万・女性343万】
商社業界も経済学系の学問を学んだ学生が多い業界の一つです。貿易や物流など世界の資源や商品を扱って、グローバルに働ける仕事です。なかでも総合商社は世界を股にかける仕事の花形であり、名門大学出身者が多く、高収入の見込める業界の一つです。海外との取引があれば語学力はもちろんのこと、初対面の人とも良好な関係を築けるコミュニケーション能力や、商談を成功させる行動力やメンタルなどが求められます。経済学を学ぶ中で、貿易や物流、物の取引に興味が湧いた人は、是非挑戦してみてはいかがでしょうか。
 

③メーカー

【平均年収データ:全体/453万・男性/492万・女性/366万】
メーカーとはいわゆる物を生産する企業、製造業ともいいます。どこに経済と関係があるのか…と思いますが、ただ単に物を生産しているわけではありません。今市場でどのような物が必要とされているのか調査して、資材を購入し、製品を作り、そして売る一連の流れがあります。つまり消費行動や市場調査、企業間の取引など経済学で学ぶあらゆることに関連する業界です。経理部門や経営部門などもありますが、人気はマーケティングや商品企画など消費者の動向を調査して次に作る商品の企画を考える職種です。
メーカーは飲料や家電、製薬、自動車など製品が多いことから企業数もそれだけ多くなります。そのため同じ大学出身のOBやOGと繋がりやすいことも特徴的です。
 

④サービス業

【平均年収データ:全体/369万・男性/405万・女性/328万】
サービス業は顧客の要望に対して、形のない商品を提供する仕事です。接客業が想像しやすいですが、接客業はサービス業の一種で、顧客と直接コミュニケーションを取りながら商品を提供する仕事をいいます。経済学は専門性が低いですが、どんな業界にも通ずるからこそ、自分に合った業界を選んで就職できるメリットがあります。例えば、情報通信企業や流通関連企業、旅行会社、不動産会社などがサービス業にあたります。
 

⑤公務員

【平均年収データ(国家公務員):全体/約650万】
【平均年収データ(地方公務員):全体/約640万】
国家公務員や地方公務員を目指す学生も多くいます。公務員試験ではミクロ経済やマクロ経済などの経済学の問題や、数学の問題があるため、大学の講義でそのような学問の経験がある経済学部生には有利です。難関大学の学生はキャリア官僚を目指すこともあり、また地方出身の経済学部生は、地元に戻って地方の経済活性化に尽力したいという人もいます。

【業界編】経済学部の主な就職先

【職種編】経済学部の主な就職先

・営業職

新入社員は、まず会社の商品を理解したり、取引先との関係を作るために営業職に就くことが多いですが、お金の流れ、ビジネスに対して興味を持っている経済学部生は特にその傾向が強いです。会社にもよりますが、目標達成が求められるため精神的にタフな人に向いています。しかし、一方で自分の頑張りが目に見えてわかるので達成感のある仕事です。またインセンティブ制度を設けている会社もあるため、結果次第では高収入を狙える花形の仕事の一つです。大学で学んだビジネスの流れを意識しながら営業をして、キャリアアップを目指していきましょう。
 

・マーケティング職

最新の流行や世の中の動向を素早くキャッチして、自社のビジネスへ取り込むための戦略を練るのがマーケティングの仕事です。経済学でマーケティングを学んだ学生にとっては特に働きたいと思う職種ではないでしょうか。ただし新卒でマーケティング職に従事することは少なく、営業職で自社製品やビジネスの仕組みについて学んでから、マーケティング職につくことがほとんどです。就活では「ゆくゆくはマーケティング職に就いて、経済学部で学んだことを活かしたいです」と言うと、将来性を見据えて就活をしている印象が生まれます。もし、マーケティングを絶対にしたいということであれば、マーケティング専門の企業へ入社するのもおすすめです。
 

・経理職

経済学部生の「数学に強い」という部分を十分に発揮できる職種です。
こちらもマーケティング職と同様に採用人数は少ない傾向にありますが、大学在学中に日商簿記などの経理に関わる資格を取っておくと、即戦力としてのアピールができます。営業職と違って、日々数字に向き合うデスクワークの仕事になりますが、几帳面で細かい作業が好きな方、ミスなく素早く仕事をこなせる方におすすめの職種です。
 

・その他

公認会計士
企業の監査や会計を専門とする国家資格です。受験資格がないため、在学中でも資格取得を目指せるものの1つです。ただし、合格率は5~10%と低く難易度の高い資格ですが、取得をすれば、それだけ就活の面接でアピールできる要素になるでしょう。

中小企業診断士
中小企業の経営課題に対する診断や助言をおこなうための国家資格です。経営全般の知識を取得でき、コンサルタント会社への就職のアピールになるほか、入社した企業の経営に携わるチャンスになります。こちらも在学中に取得できる資格です。1次試験と2次試験があり、両方合格するには4%ほどと非常に難易度が高い試験です。合格せずとも、会社経営に興味がある人は挑戦してみてもいいのではないでしょうか。

税理士
こちらも国家資格で、税務や会計に携わる仕事です。多くは大学を卒業してから目指しますが、日商簿記検定1級を合格していたり、大学3年生以上で経済学に属する科目を含めて62単位以上を取得していれば受験可能です。合格率は10~20%ですが、経理のエキスパートとして就職において強いアピールになることは間違いありません。

【職種編】経済学部の主な就職先

経済学部生が就職までに取得しておくと便利な資格

経済学部生に向いている業界や職種がわかりました。次に経済学を学んでいるからこそ、取得しておくと就活でアピールできる資格をご紹介していきます。
 

◇日商簿記検定

簿記は会社の経営成績と財務状況を明らかにする技能をいいます。簿記を理解することで、会社の経理や総務の仕事で活かせるほか、就活の企業研究において、会社の財務状況を自分で確認することができます。また営業職であっても取引先の状況を把握するときに使えるなど、ビジネスシーンの様々な場面で使えます。1級、2級、3級、初級があり、合格率は2級で10~30%ですが、挑戦している大学生も多く、受験資格もないため大学1年生からチャレンジすることができます。
 

◇TOEIC

国内市場が大きい日本ですが、人口も減少していることから、どの業界においても海外の市場へ目を向けつつあります。そのため語学力、特に英語でコミュニケーションが取れる学生は就活市場でも重宝されます。例えば、総合商社でもある楽天では、入社までにTOEIC800点以上を取る必要があります。商社やメーカーなど顧客取引が中心の業界を目指す人は勉強をしておくといいでしょう。
 

◇FP(ファイナンシャルプランナー)

簿記検定は企業の財務状況などを明らかにする技能を取得するものでしたが、ファイナンシャルプランナーは、個人のライフプランに合わせた資金計画を立案する仕事です。保険、税金、ローン、年金、不動産など、個人に関わるお金の流れを学び、顧客をサポートしていきます。金融業界や保険業界へ興味がある人におすすめの資格です。
 

◇銀行業務検定

銀行業務検定は、銀行業務において必要な実務知識や技能応用力を測定する試験です。主に銀行、保険、証券会社の行職員を対象にしていますが、大学生でも受験可能です。企業によっては昇進の条件にしているところもあり、2級以上を持っていると評価が高いです。36種類の検定があるため、興味のある分野から挑戦してみてはいかがですか。
 

◇秘書検定

ビジネスマナーの高さをアピールできる資格として有名です。受験資格もなく、難易度も高くないため、多くの学生が取得している資格の一つです。それゆえ突出してアピールできる資格ではないともいえます。

経済学部生が就職までに取得しておくと便利な資格

まとめ

経済学部出身の学生はどういう業界や職種についているのか、なぜ経済学部は就職率がいいのかなどを解説してきましたが、いかがでしたか。大学での学びを通してもともとビジネスへの関心が高い点、どの業界においても求められる人材であることが、就職率の高さへ繋がっていることがわかりました。数学的要素が強く、他の文系学生ではチャレンジしづらい資格に挑戦して専門性を高めるのもおすすめです。ライバルが多い経済学部生ですが、しっかりと対策をして就活に挑みましょう。

まとめ
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