財務と経理は水と油の関係?

財務部は、この後に説明する経理部と、業務上密接に絡み合っています。実際、例えば「管理部の中の経理課と財務課」というふうに、一つの部署の中で「課」として機能している場合もあります。

しかし、いくら密接に絡み合っているとはいっても、経理と財務は、実は、会社組織上は水と油の関係のようなもの。決して交わってはいけないし、交わると会社にとって非常にリスクが高くなります。冗談や大げさではなく、合法的ルール違反を軽く乗り越え、法律違反の世界に飛び込んでしまう。最近、巷を賑わす企業の不祥事のほとんどは、経理と財務が直接・間接を問わず絡んでいる場合が圧倒的。それは両部署とも「カネ」に関することを扱う部署だからです。

経理と財務が、業務上密接に絡み合っているのに、実は水と油の関係だということに関しては、後ほど説明します。

財務部の役割。

財務部のドメインは、「カネの管理」です。もう少し細分化すると、 

①資金調達・資金繰り・資金運用
②金融機関との折衝
③現預金の出納・管理
④売掛金(会社によっては買掛金)の直接管理
⑤経費の支払

なんて感じですかね?もちろん突き詰めていくと、こんなものでは済みませんが、あまり専門的なことを書いても仕方ないので、まずはこんなもので十分でしょう。あと、海外からの仕入などの業務が入ってくると、輸出入代金の為替予約とかも重要な業務になりますが、ここでは割愛します。

財務部のお客様とは?

ところで、通常「お客様」というと、皆さんは誰をイメージするでしょうか?普通は会社の商品を買って下さる方々、つまり顧客・消費者の方々のことを指しますよね。でも会社には、その部署や役割によって、色々次元の異なる「お客様」が存在します。財務部にとって、最大且つ細心の注意を払う必要のあるお客様は、「金融機関の方々」なんです。そして、財務部の最大任務は、この金融機関の方々といかにうまくお付き合いし、カネを引っ張り出し、会社の成長のために有意義に使えるか?ということに尽きます。つまり①と②の業務。

個人でもそうですが、例えばマンションを買う場合に、5千万円のマンションを買おうと思って、いきなり現金でポン!なんていうお金持ちなんて、めったにいませんよね?必ず金融機関から借入れをして、それを購入資金に充当し、ローンという形で返済していきます。でも、マンション自体は購入者の持ち物になるので、住むことができます。 

会社も、基本的にはこれと全く同じです。会社が成長するためには、どうしても設備投資や、新商品開発が必要になってくる場合もあるでしょう。また、全国展開に本格的に乗り出す時は、出店する地方での事務所を取得(購入・賃借問わず)のため、大きなお金が必要です。また、会社における商取引というのは、「現金商売」ではなく「掛け商売」が一般的。駄菓子を売っているような個人商店や、自動販売機でジュースを購入するような場合には、お金と引換えに商品をもらえる。お金をその場で払わないと、欲しいものがもらえない。これが「現金商売」です。対して、会社の通常取引は、顧客・消費者にまず商品を渡して、後日、代金を回収するスタイルが一般的。例えば6月1日に商品購入の契約をしていただいた顧客には、まず商品を先に渡し、お金は6月末までに支払っていただくというスタイル。これが「掛け商売」です。

掛け商売の注意点。

これが、上記④の「売掛金」です。これを個人の買い物に当てはめると、クレジットカードを使って「支払は1回で!」なんて言いつつ、商品を買う行為に近い。掛け商売の場合には、当然ながら、実際にお金が懐に入ってくるまでの間にタイムロスがあります。この間に、仕入業者に支払が生じたり(これは売掛金の逆で買掛金と呼びます)、従業員に給与を払ったりすると、一時的に手持ちの現預金が底をつくことだってあり得ます。このリスクを避けるため、常に手持ちのキャッシュは不可欠です。それでなくても会社というのは何が起こるか判らないし。

いくら順調に利益が上がっている会社であっても、無借金(つまり借金一切なし)で企業運営できる会社はほとんどありません。何らかのカタチで借入れは起こしています。それと、借りたからには、返さないといけませんよね。しかも、当然ながら金利(利子)がついていますので、そこの返済計画も考慮する必要があります。借りたら返す、これは当たり前ですが、財務部は企業存続をかけて、資金調達と資金繰りを行っています。

つづく。

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