女性が働きやすい会社は少ない?
日本社会では男女平等が当たり前とする風潮が強い一方で、女性にとってはまだまだ働きにくい社会であるのが現実です。これから就職を考えている女性は、まず女性が置かれている現状と日本企業の特徴についてあらかじめ知っておきましょう。
【日本のジェンダー・ギャップは世界121位】
日本は、世界的に見ても男女間の格差であるジェンダー・ギャップが大きいという評価を受けています。2019年に調査された「ジェンダー・ギャップ指数2020」報告書では、日本は153カ国中過去最低の世界121位という順位となりました。
これは主要7カ国の中でも最下位であり、経済・教育・保健・政治の4分野14項目において、男女格差が大きく不平等であることを示しています。
リンク:Gender Gap Report 2020|World Economic ForumGlobal
【離職率も男性より女性の方が高い】
会社の中でも、男女の格差はさまざまな部分で表れていますが、特に離職率においては男性よりも女性の方が高いのが現状です。
厚生労働省が発表している「平成30年雇用動向調査結果」では、2018年度における離職率は全体で14.6%でしたが、その内訳は男性12.5%、女性17.1%と差が生じていました。
特に、20代後半から40代の女性の離職率が高いことが特徴です。女性が結婚・出産・育児という人生の節目を迎えたとき、今まで通りの働き方ができずに仕事を離れざるを得ない状況に置かれていることが考えられます。
リンク:平成30年雇用動向調査結果の概要|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/19-2/index.html
女性が働きやすい会社とは?
せっかく就職するなら、女性が働きやすい会社を選びたいと考えるのは女性の求職者として当然です。女性が働きやすい会社と一言でいっても、望んでいる働き方や将来のキャリアによって2タイプに分けられるため、細かく知っておくと良いでしょう。
【フェアな男女平等型】
言葉の意味そのままに、男性と女性で仕事や待遇がフェアである企業は男女平等型です。社内でも重要な役職に就いている女性が多く、一般職や地域限定職は女性のみ、という昔ながらの決まりもありません。一般職から総合職にキャリアアップすることも可能です。
しかし、そうした会社では男性と女性の区別なく出世レースがあったり、ノルマ達成が求められる仕事も平等に割り振られたりすることも受け入れる必要があります。残業や付き合いの飲み会も、性別を理由に辞退するのは難しい環境である可能性が高いです。
男女平等にチャンスがある分、男女関係なくパワフルな働き方が受け入れられる人に向いているでしょう。
【ケアが充実している女性優遇型】
男女平等というよりも、結婚・出産・育児によりライフスタイルを変える女性を優遇することで、女性が働きやすい環境を整えている企業は女性優遇型です。
時短勤務や出産・育児休暇のほか、大企業であれば勤務中に子どもを預けられる企業内保育所を導入しているところもあります。会社は、女性社員に対して長く安定して働き続けるためのケアを充実させているのです。
しかし一方で、子どものいる女性社員には負担も責任も小さな仕事しか回ってこなかったり、定時で帰宅できる部署に配置変更されたりというケースも多く見られます。
女性が働きやすい環境が整っている代わりに、男性と同じキャリアは望めない構造になっていることが多いため、バリバリ働きたいタイプの女性は不満を感じるでしょう。
女性が働きやすい会社の特徴
自分の望むキャリアやライフスタイルを叶えられるような、女性が働きやすい会社を見つけるためにはどんなところに注目すれば良いのでしょうか。
就職先を探す際に、特にチェックしておきたい三つの項目を解説します。
【育児経験のある女性社員が多い】
女性が働きやすい会社かどうかは、育児経験を持つ女性社員の多さから読み取りましょう。出産・育児を経てもまだ働けているということは、企業が子どものいる女性社員に何らかのサポートをしている可能性が高いです。
出産・育児休暇や時短勤務制度などは求人票や会社HPに記載してあります。また、目に見える実績としては表れないものの、子どものいる女性と一緒に働いている社員に理解のある人が多いケースも考えられるでしょう。
子どもが急に熱を出したり、外せない学校行事があったりすれば、女性の代わりに仕事を任されたり、休暇や時短の申請を快く受け入れたりしている社員が多いのかもしれません。
会社説明や職場見学、インターンシップで会社に訪問したとき、育児経験のある女性の数や社員の対応について直接聞いてみると良いでしょう。
【多様な働き方に対応している】
多様な働き方に対応している会社は、女性が働きやすい会社の特徴として挙げられます。時短勤務制度や在宅勤務制度、フレックスタイム制の導入など、会社の福利厚生と労働条件をチェックしておきましょう。
女性が出産して小さな子どもを持ったときにはもちろんのこと、親の介護や配偶者の転勤など、働いているとさまざまなライフイベントに直面します。
家族の世話のために早めに帰宅したり、家族の転勤についていっても遠方からリモートで業務を行ったりと、生活が変わっても柔軟に働き続けられる会社は、長く安心して働けるでしょう。
【残業がなく有給取得が容易】
会社全体の傾向として、残業がなく有給が取得しやすい環境であれば、女性が働きやすい会社と言えます。
残業がない会社は、家庭で子どもと過ごす時間をきちんと確保できるだけではなく、保育園や幼稚園へのお迎えをしやすく、毎日のスケジュールが立てやすい点がメリットです。
また、残業がないということは、子どもの有無に関係なく、社員に適正な仕事量が割り振られているということでもあり、仕事の押し付け合いが発生していないと言えるでしょう。
誰もが有給取得しやすい風土も大切です。子どもの誕生日や学校行事など、気軽に有給申請ができる環境であれば、ストレスなく働けます。休むことに対する周囲への後ろめたさも感じる必要はありません。
くるみんマークとえるぼしマーク
女性が働きやすい会社かどうかを判断する基準の一つに、くるみんマークとえるぼしマークというものがあります。企業自身ではなく外部の公的機関から認定されるものなので、信用度も高く安心して入社できるでしょう。
【女性が働きやすい企業のえるぼしマーク】
えるぼしマークとは、厚生労働大臣に認定された企業に与えられるものです。
女性活躍推進法の一環として生まれたマークであり、採用・継続就業・労働時間などの働き方・管理職比率・多様なキャリアコースの計5項目で、女性活躍のための取り組みをしている企業であると判定された企業が掲げられます。
えるぼしマークには段階があり、マークの上に描かれている星の数によって見分けられることにも注目です。星の数は1~3まであり、全ての項目の条件を満たしている企業は3個の星が描かれています。
さらに、えるぼしマークを持つ企業の内、一般事業主行動計画の目標設定や女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良であると判断されれば、さらに上の「プラチナえるぼしマーク」を得られるため、ぜひチェックしてみましょう。
厚生労働省|女性活躍推進企業認定「えるぼし・プラチナえるぼし認定」
https://shokuba.mhlw.go.jp/published/special_02.htm
【子育てサポート企業のくるみんマーク】
くるみんマークも厚生労働大臣に認定された企業に与えられるマークです。次世代育成支援対策推進法に基づいて、子育てサポートが充実している企業だと判断されれば取得できます。
女性の育児休業取得率が75%を超えていることや、3歳~小学校入学前の子どもがいる労働者に時短勤務の制度が適用されていることなど、いくつかの条件を満たしている企業でなければくるみんマークは得られません。
また、より厳しい条件を満たした企業に与えられる「プラチナくるみんマーク」も存在しており、女性の働きやすさの度合いを計る目安の一つになるでしょう。
厚生労働省|子育てサポート企業認定「くるみん・プラチナくるみん認定」基準
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/26a_004.pdf
【女性活躍に取り組む企業の なでしこ銘柄】
なでしこ銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所が2012年度から共同で選定しているものです。なでしこ銘柄とは、女性活躍推進に優れた上場企業であると示すものであり、中長期の企業価値向上に注目する投資家にアピールする狙いがあります。
女性取締役が1名以上いることや、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」に「女性管理職比率」を示していることなど、いくつかの条件を満たす企業が選定されます。
なでしこ銘柄と認定されなかった企業でも「準なでしこ」に選定されたり、女性活躍度調査に回答して好評を希望した企業を「なでしこチャレンジ企業」として紹介したりする取り組みもあるため、女性活躍に関心がある企業かどうかの判断にはなるでしょう。
経済産業省|女性活躍に優れた上場企業を選定「なでしこ銘柄」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/nadeshiko.html
女性の働きやすい職場の例
女性の働きやすい職場を希望しても、やみくもに就活していてはなかなか見つからないものです。女性の働きやすい職場とは例えばどんなところか、業界・職種・具体的阿企業名を挙げながら解説します。
【水産・農林業界や製造業界】
女性社員が比較的少なく、一見女性が働きやすい業界には見えない水産・農林業界や製造業界の中にも、女性に優しい会社は存在します。
水産・農業の中には年間休日が120日と多い企業や、長期休暇・連休が取得できる企業が見られ、中には過去に育児休業取得率100%という数字を出した企業もあるのです。
さらに、大手流通企業の傘下に置かれている水産・農林関連企業や、大手メーカーの製造企業であれば、産休や育休、時短勤務制度、住宅手当など大手企業と同レベルの手厚い福利厚生を受けられます。
ほか、男性比率が多い業界だからこそ女性への配慮が行き届いているというケースや、同じ能力レベルなら女性が役職登用されやすいというケースもあるのです。
【職種ではマーケティングや企画】
女性に人気のあるマーケティング職や企画職は、女性社員が多いからこそ待遇や福利厚生に配慮され、女性が働きやすい職種となっています。
テレワークや時短勤務、フレックスタイム制を導入しやすい職種でもあり、子どもがいても時間の調整をしながら働ける仕事です。女性をターゲットにした商品を取り扱う業界であれば女性ならではの感性を求められることが多く、やりがいもあるでしょう。
【企業はNTTや日本IBM】
具体的な企業名を挙げるなら、まずNTTが女性にとって働きやすい会社の代表例と言えます。ダイバーシティ推進小委員会や女性コミュニティを設立しており、女性マネージャーが多くキャリアを積むチャンスがある会社です。
活躍する女性が多いからこそ、結婚出産を経験しても職場復帰しやすい環境があり、多様性を尊重される働きやすい会社だと言えるでしょう。
日本IBMも、産前・産後休暇や育児休暇、在宅勤務のほか、残業規制があり働きやすい会社とされます。さらに、女性社員の割合や管理職の向上に具体的な数値目標を掲げており、積極的に女性活躍を推し進めています。
女性が活躍できる職場で働こう
せっかく就職するなら、女性が働きやすく、活躍しやすい職場を選んだ方がチャンスが多いものです。まだまだ男女間の格差がある日本社会だからこそ、女性が働きやすい会社の特徴や認定マークをチェックし、女性にとってより良い会社を見つけ出しましょう。
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