【年収を知る前に】東京電力ってどんな会社?

東京電力の年収を知る前に、まずは東京電力がどのような会社で、どんな事業をおこなっているのか押さえておきましょう。

◇東京電力の組織図

東京電力は、まず事業内容ごとに次の4つの株式会社に分かれています。
①東京電力フュエル&パワー:燃料火力発電事業
②東京電力パワーグリッド:一般送配電事業
③東京電力エナジーパートナー:小売電気事業
④東京電力リニューアブルパワー:再生可能エネルギー発電事業

それぞれ別の株式会社として運営しています。
そしてこれらの株式会社の株式を保有し、経営をサポートしているのが「東京電力ホールディングス」です。
2016年4月から始まった家庭用電力の小売全面自由化に対応するため、そしてより現場に近いところで、それぞれの事業部署ごとに迅速に意思決定ができるようにするために、このようなホールディングカンパニー制を導入しました。

新卒の採用では、東京電力フュエル&パワー以外の3つの組織と、それらを取りまとめるホールディングスの計5つのいずれかの会社に配属される形になります。「事務系職」と「技術系職」で分かれて応募するのみで、事業会社ごとに応募があるわけではありません。

ではそれぞれの事業会社が具体的にどんなことをやっているのか見ていきましょう。

◇東京電力フュエル&パワー

東京電力の燃料火力発電事業を担っている会社です。
しかし2019年に中京電力と設立した合弁会社「JERA」に発電所を移管したため、現在は発電所を保有していません。今はJERAの株式を50%保有しているのみで、実質中間持株会社となっています。そのため新卒採用もおこなっていません。

◇東京電力パワーグリッド

東京電力パワーグリッドは、一般向けの送電や配電事業をおこなっている会社です。
主に次の8つの仕事があります。
・架空送電
発電所と送電所、発電所と発電所を結ぶ送電線の保守や点検などをおこないます。
・地中送電
地中に埋まっている送電線の設置やメンテナンスをおこないます。
・変電
発電所から高電圧で送り出されたものを家庭やオフィス用に200vから100vに下げる変電所の建設、運転保守、工事業務をおこないます。
・配電
電線や電柱、変圧器などの配電設備の建設、運用、保守をおこないます。
・系統運用
電気の使用量や電力潮流、電圧を把握して、発電機や変圧器、送電線の設備の運転指示や操作を24時間体制でおこないます。
・電子通信
電気の周波数や電圧などの情報を伝送するための通信ネットワークの構築や維持運営をおこないます。
・パワーグリッドサービス
直接一般の顧客とやり取りをする仕事です。電気事業制度や再生可能エネルギー固定価格買取制度などの制度変更を把握しながら、東京電力のサービスを顧客の課題に合わせて案内していきます。
・用地
電力設備を建設するための土地を確保したり、建設後は設備を受け入れてもらえるよう周辺住民との関係構築、取得した権利を的確に保全したりします。

◇東京エナジーパートナー

電気やガスを販売したり、東京電力としての新サービスを提供する会社です。
主に次の6つの仕事があります。
・法人営業
ビルや工場を担当する大型法人と、オフィスや病院などを担当する中小法人に分かれており、それぞれの施設で効率的にエネルギー利用ができるよう営業をおこないます。
・家庭向け営業
一般家庭向けに最適なガスや電気の料金プラン、住生活に合ったサービスなどを提案していきます。
・商品開発
その名の通り、東京電力の商品を開発する仕事です。アイデア立案、テスト、商品化まですべてを一貫しておこないます。
・オペレーション業務
東京電力の電気やガスの契約申し込みの受付や料金の計算、管理など、顧客からの申し込みや問い合わせの対応をしている仕事です。
・電力取引
電気を仕入れる電源調達、調達した電気を顧客の使用状況に応じて届ける需給運用、卸電力取引所を通しておこなう電力取引を主に担う部署です。
・ガス販売
ガス販売戦略の企画、立案、ガス調達、託送運用、保安管理、料金請求などガス販売に関わる業務をおこなっています。

◇東京電力リニューアブルパワー

火力などの従来の発電方法ではなく、これから重要になってくる再生可能エネルギーの主力電源化を進めるために出来た会社です。
・水力発電
163か所にある水力発電所を24時間体制で監視、制御しています。また設備点検や診断などをおこない、劣化した設備があればその修理や取替工事などをおこなっています。
・風力発電
東伊豆風力発電所と銚子沖洋上風力発電所の2カ所の運営、管理、保守などをおこなっています。

◇東京電力ホールディングス

東京電力グループ全体の本社機能研究開発機能を担う会社です。
・原子力
主に福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取り組みをおこなっています。また原子力発電の安全確保に向けた対策や実施、原子燃料サイクルの検討などもおこないます。
・企画/グループ事業管理
東京電力の経営方針の立案、エネルギー政策に関する調査や分析、事業モニタリング、経営合理化の総括などをおこなっています。
・広報
記者会見などのメディア対応、WEBコンテンツの制作や運営、SNSの活用などをおこないます。
・総務/法務
法律や訴訟への対応、国内外を問わずプロジェクトに関する契約書の法的審査や法令調査、法的リスクの分析や対策の提案などをおこない、グループ全体の業務を法律の面から支えています。
・国際
海外送配電事業や新事業領域への投資、海外コンサルティング事業、海外調査、国際交流、事業支援などをおこなっています。
・研究所
東京電力の事業戦略を実行するための技術開発やエンジニアリング支援などをおこなっています。

【年収を知る前に】東京電力ってどんな会社?

東京電力の平均年収は低い?それとも高すぎる?

東京電力の事業内容や職種などがわかりましたが、これらをおこなう社員の平均年収はどのくらいなのか早速見ていきましょう。

企業の平均年収を見る場合、上場企業が毎年発行する有価証券報告書を使うとわかります。
しかし会社によっては一般に公開していないところもあり、またホールディングカンパニー制をとっている会社は、グループ会社全体の経営を担う会社の平均年収しか出していないところもあります。
東京電力の場合は、東京電力ホールディングスと、東京電力パワーグリッドの2社のみ有価証券報告書が見れるので、今回はそれをもとに確認していきます。

◇東京電力の平均年収の推移

東京電力ホールディングスの過去10年間の平均年収の推移は次のとおりです。

    平均年収 従業員数
2020年 819万円 7,180人
2019年 812万円 8,291人
2018年 805万円 8,309人
2017年 802万円 8,443人
2016年 822万円 7,743人
2015年 733万円 32,440人
2014年 709万円 32,831人
2013年 684万円 34,689人
2012年 619万円 36,077人
2011年 653万円 37,459人

2016年からホールディングカンパニー制が導入されているため、従業員数が大幅に減っています。また東京電力の経営を担う社員が多いことから、平均年収も高くなっているのが特徴的です。経営層の平均年収が約800万円前後というのがわかります。

では、より社員の平均年収に近い数値を見るために、東京電力パワーグリッドの有価証券報告書から平均年収の推移を見ていきましょう。

    平均年収 従業員数
2020年 753万円 15,346人
2019年 731万円 16,398人
2018年 718万円 17,548人
2017年 721万円 19,367人

大体、700万円台が平均年収であることがわかります。
日本の男女合わせた正社員の平均年収が約503万円ですから、東京電力の平均年収はそれよりも高い水準であるといえるでしょう。

◇電気・ガス業界の平均年収の比較

では、電気・ガス業界のなかでは東京電力の平均年収は高い方なのでしょうか、それとも低い方なのでしょうか。その点を探っていきましょう。

     平均年収 従業員数 平均年齢
東京電力 819万円 7,180人 45,3歳
関西電力 836万円 8,770人 43,1歳
中部電力 849万円 3,092人 43,6歳
東北電力 775万円 5,061人 43,3歳
九州電力 759万円 5,348人 42,3歳

電気・ガス業界の売上高順に並べてみました。
どの電力会社も電力の小売全面自由化にともない、東京電力と同じように発電事業や送配電事業は別に分けて、カンパニー制を導入しています。そのため、これらの平均年収の数値は経営層の社員の平均年収が大きく影響していることを念頭に置いておきましょう。

電力会社ごとに比べてみると、中部電力の平均年収が一番高いです。東京電力の平均年収は電気・ガス業界の中でも平均的といえるでしょう。

東京電力の平均年収は低い?それとも高すぎる?

新卒の年収はいくら?東京電力の初任給と給与制度

では最後に就活生の皆さんが一番気になる、東京電力の初任給と給与制度について押さえていきましょう。

◇東京電力の初任給

2022年卒の新卒採用の募集要項を見てみると、院卒、大卒、高専卒、短期大卒、専門学校卒で募集があり、それぞれで初任給に差が出ています。

院卒修士了  235,000円
大卒     212,000円
高専専攻科卒 212,000円
高専本科卒  186,000円
短期大卒   176,000円
専門学校卒  176,000円

日本の大卒の初任給の平均は約21万円ですから、東京電力へ入社した場合の給与のスタートは平均並みということになります。

◇東京電力の給与制度

東京電力は年俸制をとっており、ボーナスがありません
年俸は「基本年俸」と勤務地に応じて手当がつく「ライフサイクル手当」から構成され、この合計した金額を12で割った給与が毎月支払われます。業績が良ければ個人業績年俸としてプラスされる仕組みです。

基本的には年功序列制であり、上長との面談があるものの、個人の実績があったからといって給与にそれが反映されることは少ないそうです。皆同じサイクルで給与が上がっていく形です。年次を積んでいけば確実に給与が上がるのはメリットである一方、頑張っても給与に反映されないことからモチベーションの維持が難しいこと、若いうちからバリバリに稼ぎたい人にはあまり向いていないかもしれません。

新卒の年収はいくら?東京電力の初任給と給与制度

まとめ

東京電力の年収を中心に、事業内容や職種、新卒社員の初任給や給与制度などを解説してきましたが、いかがでしたか。日本の電気、ガス事業を担うだけあって高水準の平均年収であることがわかりました。しかし一方で年功序列制の風土が強いため、高い年収になるためには長く勤める必要があります。自分はどんな風に仕事をしていきたいか、自分の仕事に対してどのように評価してほしいのかを考えながら、仕事選びをしていき、入社後にギャップを感じないようにしていきましょう。

まとめ
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