そもそも弁護士とは?

弁護士とは社会で起きる争いごとや事件に対して、法律の面から適切な予防方法や対処方法、解決方法をアドバイスする仕事です。日本弁護士連合会のホームページには弁護士とは「社会生活上の医師」とされています。主に生活の中での争いごとである民事事件と、罪を犯した疑いのある人を捜査、裁判する刑事事件を扱います。おそらく身近に弁護士と関わりがあるとすると、民事事件のほうになるでしょう。

【働き方別】弁護士は働き方によって年収も変わる?

弁護士というと、裁判所で刑事事件の被疑者や被告人の弁護をする人というイメージがありますが、活躍の場は他にもあります。またどこで働くかによって年収も変わってきます。
 

①法律事務所で働く

まずは法律業務をおこなう事業所で働く場合です。事業所によっては弁護士事務所ともいいますが内容にあまり変わりはありません。事務所は裁判所の近くに置かれていることが多く、民事事件や刑事事件の弁護士としての依頼を受けて仕事をしていきます。日本の五大法律事務所と呼ばれる大きな法律事務所から、中小企業の法務や住民の家事事件を扱う町の小さい法律事務所まで規模は様々です。

事務所の規模と年収の関係を見てみると、月収は10~99人の事務所が多くなっています。しかし年間賞与などは事務所の規模が大きければ大きいほど高くなり、結果的に1000人以上の事務所の弁護士の年収が一番高くなっています。法律事務所で働く場合、その事務所の規模感や何を得意としているのかといったことが、年収に影響してくるようです。

事務所の人数 現金給与額 年間賞与など 年収換算
10~99人   約647万   約117万   約764万
100~999人  約513万   約134万   約647万
1000人~   約579万   約190万   約769万

なお、日本の五大法律事務所になると入社時で年収1000万円、昇格すると年収数千万~数億といわれています。
 

②開業弁護士として働く

事務所や企業などには属さずに、独立して開業する弁護士もいます。法律事務所のように雇う人・雇われる人という関係がないため、案件を請け負って報酬を得て、そこから経費を差し引いた金額がそのまま収入になります。自分の営業力や実績次第で有名弁護士として活躍できる可能性も秘めている道です。
 

③自治体内弁護士として働く

都庁や県庁などの地方自治体の中で働く弁護士もいます。自治体職員の中に弁護士がいることで行政手続きの適正化を図ったり、違法な行政活動を規制したりできることから、自治体からの需要があります。
 

④公設事務所弁護士として働く

自由に法律事務所を開設していいということになると、案件が取りやすく需要が高い都市部に法律事務所ができ、地方都市に弁護士がいなくなってしまいます。そうした弁護士の過疎化を防ぐために、日弁連や地方弁護士会、弁護士連合会などから支援を受けて開設されたのが公設事務所という法律事務所です。現在、22都道府県に設置されています。
 

⑤企業内弁護士(インハウス)として働く

近年は企業が弁護士を必要な時に法律事務所にかけあうのではなく、弁護士を社員として雇うところが増えています。法的リスクを迅速に判断できるよう、また法務やコンプライアンスを強化するためです。企業内弁護士は、法律事務所の弁護士や開業弁護士に比べると収入は減りますが、勤務時間が押さえられ働きやすい点がメリットです。普段は会社の法務で仕事をし、必要があれば弁護士としても活躍できるというポストです。
企業内弁護士の年収は750万~1000万未満の人が最も多く、次いで1000万~1250万です。五大法律事務所などの大規模な法律事務所には劣りますが、将来的に社内の役員になると法律事務所勤務の弁護士以上の収入になる可能性もあります。

【働き方別】弁護士は働き方によって年収も変わる?

【ポジション別】弁護士はポジションによって年収も変わる?

◇アソシエイト弁護士として働く

アソシエイトとは、部下の立場で働く弁護士のことです。法律事務所に雇われて働く新人弁護士のことで、平社員のようなポジションです。イソ弁とも呼ばれます。3~4年目をジュニアアソシエイト、経験を積むとシニアアソシエイトとなり、平均年収は約700万円程度といわれています。
 

◇パートナー弁護士として働く

ボス弁とも呼ばれ、法律事務所の経営者や共同経営者のことを指します。大きな事務所になればなるほどパートナーの細分化が激しいですが、年収は1000万円以上ともいわれます。ただし非常に高度な業務内容をこなしたり、コンサルティング業務にも関わるなど法律関係のスキルだけでなく、経営方面のスキルも必要になってきます。アソシエイト弁護士から経験を積み、転職をしてパートナー弁護士になるという人もいるようです。

弁護士の平均年収

法律事務所で働く場合や、自分で開業する場合、企業の専属弁護士として働く場合など働く場所によって年収も変わり、アソシエイト弁護士やパートナー弁護士など役職によっても年収が変わることが分かりましたが、世間一般から見る平均的な弁護士の年収はどのくらいなのでしょうか。
 

◇弁護士の初任給

弁護士の初任給は約35万円です。一般企業に勤める新卒社員の初任給に比べると、大卒で約21万円、高専・短大卒で約18万円ですから、非常に高額なことが分かります。しかし弁護士になるには法科大学院に進学したり、司法試験に合格したりと、そこに至るまでの費用と時間がかかっています。
 

◇弁護士の年収平均値

弁護士全体の平均年収の推移は以下の通りです。
2006年:3,620万円
2008年:3,389万円
2010年:3,304万円
2014年:2,402万円
2018年:2,143万円

手取り(所得)にすると以下のようになります。
2006年:1,748万円
2008年:1,667万円
2010年:1,471万円
2014年:907万円
2018年:959万円

年々減少傾向にあることが分かります。
 

◇弁護士の年収中央値

平均値にすると、非常に稼いでいる人の値に引っ張られてしまうため、中央値でも年収をみてみましょう。
2006年:2,400万円
2008年:2,200万円
2010年:2,112万円
2014年:1,430万円
2018年:1,200万円

手取り(所得)にすると以下のようになります。
2006年:1,200万円
2008年:1,100万円
2010年:959万円
2014年:600万円
2018年:650万円

日本の平均所得が約442万円ですから、それよりは高い年収を得ていますが、飛びぬけて高いという印象にはならないのではないでしょうか。なぜこのように弁護士の年収はどんどん低くなっているのでしょうか。

弁護士の平均年収

弁護士の年収が減っているのはなぜ?

◇新司法試験制度の導入がきっかけ

日本ではグローバリゼーションの動きから、アメリカのように国際訴訟社会になった場合のに備えて、裁判の迅速化や法律の簡素化、法律の専門家の増加などの対策を進めていました。その中の一つとして2006年に司法試験制度が新しくなり一気に弁護士の人数が増えたのです。
しかし実際には訴訟数は一向に増えず、また弁護士は定年がないため現役で働く弁護士だけが増えるばかりでした。そのため案件の奪い合いになり、いかに仕事が取れるか、仕事が取れる事務所で働いているかで年収も変わってくるということになってしまったのです。
 

◇年収をあげるには?

そのため今弁護士として年収をあげる方法は、法律事務所で働きつつも個人受任の案件を請け負ったり、大手の法律事務所や企業の法務をおこなう事務所に転職するという2点があげられます。どちらにしても弁護士としての力を付けて、得意な分野を作り、自分をブランディングする力が求められます。

まとめ

弁護士の年収について解説してきましたが、いかがでしたか。弁護士になるまでの道のりを考えると、想像よりも高くなかったという人もいるのではないでしょうか。1つに弁護士といっても法律事務所で働くだけではなく、地方自治体で勤務したり、一般企業の専属弁護士として働いたりと様々な働き方があり、それによって年収も変化することが分かりました。自分は年収を取るのか、それとも働きやすさを取るのかを考えて、自分に合った弁護士としての働き方ができるといいですね。

まとめ

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