そもそも初任給の概念とは?

就職活動をしていると、企業の提示する条件面が気になるものです。特に、同じく就職活動に励む同期とは、初任給の額について話題にする機会も多いでしょう。

ところで、そもそも初任給とは具体的に何なのでしょうか。初任給の意味と内訳について押さえておきましょう。

【初めての基本給に手当を含めた給料】

初任給とは、その言葉の通り、新入社員が入社して初めて受け取る給料を意味します。そもそも給料とは、基本給に住宅手当や通勤手当、残業手当、役職手当などが追加された総支給額を指します。

新入社員であれば、まだ本社での研修中である場合がほとんどです。初任給には役職によって役職手当や、時間外労働による残業手当などは当然なく、社員全員に支給される通勤手当のみが支給対象となっているでしょう。

【手取りは初任給から社会保険料と税を差し引いた額】

初任給が支給されても、給料明細に書かれた総支給額が手元に入るわけではありません。給料からは、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料のほか、所得税や住民税が引かれます。計算式は以下の通りです。

手取り=初任給-(雇用保険料+健康保険料+厚生年金保険料+所得税+住民税)

とはいえ、住民税は前年度の所得に応じて発生するため、社会人1年目では発生しません。さらに、社会保険料の中でも、厚生年金保険と健康保険料は初任給の翌月から差し引かれます。

そのため、結果的には初任給から引かれる項目は雇用保険と所得税程度であるため、初任給のほぼ全額が手取りになると考えて良いでしょう。

【大卒初任給は年々上昇傾向】

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、令和元年(2019年)まで新卒の初任給はほぼ全ての学歴において年々上昇しています。特に大卒の初任給は前年度より1.7%増の21万200円という結果となりました。

大卒・高卒の初任給上昇は6年連続、大学院修士課程修了と高専・短大卒は7年連続です。

ここ数年は慢性的な人手不足であり、新卒者にとっては有利な売り手市場と言えます。初任給を高く設定し、優秀な人材を確保したいという企業の考えが反映されているのです。

参考:厚生労働省|令和元年賃金構造基本統計調査|1学歴別にみた初任給
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/19/01.html

そもそも初任給の概念とは?

学歴別の平均初任給

日本の社会では、同じ新卒採用であっても、学歴によって平均初任給に差があります。学歴が高い人には学んだ知識を活かして活躍ができると企業が期待しているからです。

それでは、具体的に学歴の差がどれくらい平均初任給の差となって現れるのか、確認してみましょう。令和元年の調査結果を基に比較しています。

参考:厚生労働省|令和元年賃金構造基本統計調査|1学歴別にみた初任給
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/19/01.html

【高卒の初任給】

高卒の平均初任給は、16万7400円です。さらに高度な学問を学ぶ大学や、就職に役立つ専門的な技術を身につける専門学校に進学せず、一般的な教養を学ぶ高校を卒業後すぐに就職し働く高卒の初任給は、他の学歴と比較すると低い傾向にあります。

どの学歴でも初任給は年々上昇しているとはいえ、高卒の初任給の相場はそう大きく変わりません。また、高卒は一部の専門性が高い職種に対して応募制限が掛かる現実があるのです。初任給の高い企業を希望しても応募できない、というケースもあるため注意しましょう。

【高専・短大卒の初任給】

厚生労働省の調査によると、高専・短大卒の平均初任給は18万3900円です。高専とは高等専門学校を卒業した人、短大卒は2年制の短期大学を卒業した人を指します。

高専・短大卒の初任給は、大卒の初任給よりも低く設定されているケースがほとんどです。同じ職種で新卒採用された同期であっても、初任給に差が出てきます。

【4年制大卒の初任給】

令和元年の調査における大卒の平均初任給は、21万200円です。大卒とは、4年制大学を卒業した人を指します。

一部の大手企業や職種によっては、応募可能な学歴が大卒以上というところもあります。入社後に業務上取得しなければならない資格の中には、受験資格が大卒というケースもあるため、企業側が入社前時点で応募制限を設ける場合があるのです。

大卒になれば、選べる職業の幅が広がるため、初任給の高い企業の入社を目指せるでしょう。

【大学院卒の場合】

大学院卒の平均初任給は、修士課程修了の場合で23万8900円であり、最も平均初任給が高い学歴です。大卒者よりも専門的な学問を学んでいるため、入社後は高度な仕事を任せられるケースが多いでしょう。

大学院を卒業するためには、4年制大学を卒業した後、2年間の修士課程を終える必要があります。2年間の修士課程を終えた人の学位は「修士」であり、さらに一般的には3年間の博士課程を終えた人の学位は「博士」です。

大学院卒の中でも、修士と博士で就ける仕事に差があります。博士課程修了者は、大企業の研究職や医者、大学教授など専門職への道も開かれています。

学歴別の平均初任給

初任給が高い人気の業界

学歴によって初任給が左右されるのは事実ですが、初任給が高い傾向がある業界を選べば、同じ学歴でも平均以上の初任給が支給されます。より多くの初任給を得たいという人は、以下の業界の中から就職先を探してみてはいかがでしょうか。

【IT業界】

IT業界は技術力や実務経験を重視する傾向にあります。

コンピューターを駆使してクライアントの課題を解決したり、システムを提供したりするため、プログラミングに関する高度な知識とスキルが求められますが、その分初任給が高く設定されているのです。

さらに、IT業界は職種の幅も広く、システムの設計・開発・運用・保守管理を行うシステムエンジニアやプログラマーのほか、顧客のニーズを聞き取る営業やコンサルタントなども存在し、求められる能力も異なります。

職種を絞れば未経験でも始められるのがIT業界であり、入社後は学歴や年齢、勤続年数に関係なく、本人の能力次第で高い給料を得られる可能性があるのです。

【コンサル業界】

コンサル業界は、新卒入社でも高い給料が期待できる業界と言えます。企業経営における様々な課題に対して解決するために助言をする仕事がコンサルティングであり、クライアントの命運を左右する責任重大な仕事です。

企業経営のアドバイスと一言で言っても、事業のテコ入れや人材雇用・削減など、あらゆる切り口で企業にアドバイスを行うため、必要な知識は多岐に渡ります。さらに、問題を解決するための発想力や提案力が求められるでしょう。

求められるレベルが高い分高額な初任給が設定されていますが、一定の学歴以上でなければ応募できない企業も多いため注意しましょう。

【金融業界】

金融業界も、初任給が高い業界の代表格です。金融業界には、銀行や証券会社、保険会社などが含まれます。

個人・法人の預金を別の個人・法人に融資して金利分の差額を得たり、金融商品の販売により利益を出したりしているのが銀行です。証券会社は株式の売買手数料と運用によって成り立っており、保険会社は火災保険や自動車保険などを商品として取り扱っています。

いずれも、お金に関する知識と市場を予測できるだけの思考力を求められる仕事です。また、顧客に商品を販売する営業力とメンタルの強さも必要となります。

厳しい業界である分、全体的な年収も高く安定しており、出世コースに乗れればさらに多くの給料が見込めるでしょう。

初任給が高い人気の業界

初任給以外に手取りやボーナスの確認を

初めて就職活動をする人は、分かりやすい初任給にばかり気を取られがちです。初任給だけで就職先の企業を判断するのではなく、実際の手取りやボーナスについても確認しておきましょう。

【手取り額を計算しよう】

手取り額とは、基本給に加えて通勤手当や時間外手当などの各種手当を足し合わせた額面から、社会保険料や税金を天引きした結果、手元に残る金額を指します。

そのため、実際にいくらもらえるのかを正確に知りたければ、手取り額を計算してみると良いでしょう。入社後に「想像していた額よりも少ない…」というギャップを防げます。

まず、初任給の額面から雇用保険料を引いた金額を算出しましょう。その金額に対して掛かる所得税を引いた金額が、手取り額です。

初任給で引かれる雇用保険料率と、給与所得の算出方法は、厚生労働省や国税庁のサイトなどで確認できます。

参考:令和3年度の雇用保険料率について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000739455.pdf

参考:給与所得の源泉徴収税額(令和 3 年分)|国税庁
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2020/data/all.pdf

【ボーナスは企業の業績で変動する】

ボーナスとは、賞与とも言われ、通常支払われる給料とは別に支払われるお金であり、社員に企業の利益を還元するために用意されています。夏と冬に基本給の何カ月分もしくは基本給の何%分かが支払われるケースが多いでしょう。

ボーナスは給料と違い、企業が必ず支給しなければならないものではありません。企業の業績や個人が出した成果によって変動するばかりか、企業によっては用意していないところもあるのです。

そのため、ボーナスの有無や、基本給何カ月分の支給になるのかを確認するのは、企業の良し悪しを判断するバロメーターの一つとして考えられます。

初任給以外に手取りやボーナスの確認を

給与面で企業を選ぶ上で必要なことは?

就職先の企業を選ぶ際、給与面を重要な判断材料としている人は多いでしょう。給料で企業をチェックする際に必要なのは、初任給をはじめ入社すぐにもらえる金額だけでなく、数年後にもらえる金額にも注目することです。

初任給以外で給料を総合的に判断する視点として、平均年収と昇給を解説します。

【平均年齢でもらえる年収を確認】

平均年収は、その企業の平均年齢になったときにもらえる年収と解釈できます。入社直後ではなく、入社してから数年たった自分の年収をある程度予測できるのです。

企業によっては、学歴ごとの平均年収を公開しているところもあります。もし、学歴によって年収の差がどんどん大きくなっていくようであれば、その企業は高学歴ほど給料の高い役職に就いていると考えられるでしょう。

ただし、平均年収はあくまで企業が申告しているにすぎないため、参考程度に留めておくのをおすすめします。総合職・一般職など職種間の給料差を考慮せずに平均を出したり、給料が高額な中高年層が多いため平均年収がつり上がっていたりというケースもあるのです。

【昇給があるか確認】

入社時点の給料の高低だけでなく、昇給の有無も確認しましょう。勤続年数が伸びるごとに給与額が増えれば、ゆくゆくは高い収入を得られるでしょう。逆に、初任給が高額でも昇給がほとんど無ければ、給料は横ばいです。

さらに、給料が伸びる可能性は、企業の役職者の年齢層をチェックすることでも確認できます。比較的若い社員が多く役職に就いていれば、年齢や経験に関係なく昇進し、早めに給料アップが見込めると推測できるのです。

給与面で企業を選ぶ上で必要なことは?

初任給の平均以外も確認して就活しよう

初任給の高さは、就職先企業を決める上で一つのバロメーターになります。自分の学歴における平均初任給と比較して、高いに越したことはありませんが、初任給以外にも目を向けて就活をした方が、将来的な待遇の良い企業に就職できるものです。

初任給と手取り額の関係など正しい知識を身につけながら、自分にとって本当に良い企業を見つけましょう。

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