新卒採用で資格は重視されない?
自身のスキルをアピールできる資格の取得は、多くの就職活動生が考えている取り組みの一つでしょう。
ただ企業と学生では資格に対する評価は異なり、想定しているよりも企業側は重視していないケースもあります。
ここからは企業側から見た資格取得の重要性を中心に解説します。
【資格を重視する企業は8.3%】
企業は採用活動において、資格は決して重要視していません。
就職みらい研究所の「就職白書2018」によると、資格を重視している企業は8.3%に留まっています。その一方で学生は面接時、取得した資格をアピールする傾向があります。
学生の資格を重要視しない理由は、新卒入社した社員を時間を掛けて育てる文化が日本にあるためです。そのため「人柄」「コミュニケーション能力」など、会社では教えられない部分が評価される傾向にあります。
ただ簿記やIT、英語関係の資格は、企業によっては評価ポイントとなるのも事実です。採用でも有利になる場合もあるので、興味のある業界関連でアピールにつながる資格を調べておくのも悪くないでしょう。
就職みらい研究所|就職白書2018 ~冊子版 PDF~
https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2018/03/hakusyo2018_01-56.pdf
【資格を取る過程はアピールできる】
持っている資格ではなく、資格を取るために取り組んだ過程は面接時のアピールポイントになります。
「1日8時間を資格勉強にあてた」「部活と両立しながら半年で取得した」など、取得までの努力・工夫した内容を語れば、ポテンシャルの高い学生として評価されるでしょう。
資格を取得した理由を明確にしておくのも大切です。志望する業界の資格なら、採用担当者も納得できますが、関連性が低い場合はプラスの評価にはつながない可能性もあります。
英語力をアピールできるTOEIC
興味のある業界が明確に決まっていない人は、英語力をアピールできる「TOEIC」で高得点を狙いましょう。
ではなぜTOEICが良いのでしょうか?
【英語力を必要とする企業は多い】
グローバル化が進む現代では、文理関係なく多くの企業が英語を使ったコミュニケーションを必要としています。TOEICは学生の英語力を計るための参考情報になるため、企業によっては必須の記載項目としているほどです。
就職活動が目的でなくとも、英語力は自身の活躍の場を広げるためには欠かせない能力です。昇進や昇格試験でTOEICの点数が評価される企業もあるので、将来を見据えて在学中から勉強しておいて損はないでしょう。
【最低でも650点以上】
TOEICは誰でも受験できるため、履歴書に記載するには最低でも650点以上が望ましいです。
2021年1月に実施されたTOEICの平均スコアは621.5点となっており、年々増加傾向にあります。そのため500点台など、平均よりも低い点数を履歴書に記載しても英語力がないと判断されるかもしれません。
反対に実践で使える英語力の基準となる730点となれば、高く評価されるでしょう。
また英語を日常的に使う業界・企業となれば、求められる英語力も高くなります。中には800点以上が採用の最低条件としている企業もあるので、応募前に確認しておきましょう。
【受験のタイミングに注意】
TOEICは年間で約10回開催されており、毎月のように受験が可能です。しかしスコアが開示されるまでに1カ月間ほど時間が掛かるめ、受験のタイミングには注意しましょう。
業界研究や自己分析など、就職活動に費やす時間を考えれば、就職活動が解禁される前には受験しておきたいところです。
TOEICの受験前には、日程・会場を公式ホームページから確認しておきましょう。1年後まで日程が組まれており、申し込みは受験日の2カ月前から可能です。ただ受付期間は5日前後と非常に短いので、忘れないようにしましょう。
経理や財務に活かせる日商簿記
経理・財務など事務関係の職種を希望しているなら、「日商簿記」がおすすめです。
簿記の知識は経理以外にも活用できるため、TOEICと並んで取得して損することはありません。では具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
【経理はもちろんそれ以外でも活躍】
日商簿記は、売買・財産の記録を記帳し、財務諸表を作成する技術と知能を問う資格です。
企業の財務関係を管理する経理担当には欠かせない知識と言えるでしょう。そのため、事務でのお仕事を志望する人は在学中に取っておきたい資格です。
また財務諸表が読めるようになれば経営・財務状況が理解できます。そのため職種を問わず、ビジネスパーソンであれば取得しておきたい資格の一つとも言えます。
【2級以上を取得しよう】
日商簿記は1級・2級・3級・初級・原価計算初級の5階級があります。ただ3級以下の難易度は決して高くなく、50〜100時間の勉強で取得できると言われています。
例えば3級の試験では、財務処理・青色申告の書類作成など、職種によっては当たり前の知識が問われる程度です。
そのため就職活動においては、2級以上から評価される傾向にあります。2級では商業や工業など、業界別の財務諸表から経営状況が理解できるか問われます。
日商簿記の試験は年間3回(6月・11月・2月)行われるので、就職活動のスケジュールを考えて計画を立てましょう。例えば3月から就職活動をはじめるなら、11月の試験に合わせて勉強を進めるといいでしょう。
業界別のおすすめ資格
金融や不動産、IT関係など志望している業界が明確なっている人は、関連する資格を在学中に取っておくと就職活動を有利に進められる場合もあります。
では具体的にどのような資格が良いのでしょうか。
【金融業界ならファイナンシャルプランナー】
「ファイナンシャルプランナー(FP)」とは、家計管理や税制、住宅ローンなどのお金の管理と運用に関する知識を身に付けられる資格の一つです。
日商簿記は企業の財政状況を明確にするスキルである一方、FPは個人の資産管理が専門と言えるでしょう。
そのためFPは個人の顧客を相手にする金融業界などと相性が良く、就職活動の時もアピールポイントになります。
またFPには国家資格の「FP技能士」や民間資格の「AFP」、国際ライセンスの「CFP」の3種類があるので、取得前には確認しておきましょう。最初は、誰でも受験ができる「3級FP技能士」がおすすめです。
【不動産業界なら宅建建物取引士】
不動産業界への就職を考えているなら、国家資格「宅地建物取引士(宅建士)」の取得を検討しましょう。宅建士は賃貸物件などの不動産取引に必要な重要事項説明を読むことができるため、どの不動産企業も欲している資格だからです。
また不動産取引業界では、従業員の2割(5人に対して1人)が宅建士であることが義務化されています。業務上、宅建士は必要な人材のため在学中に取得できれば不動産業界での就職活動は有利になるはずです。
ただ宅建士の試験は10月第3日曜日にしか実施されないため、取得できるチャンスが少ないです。また合格率も15〜17%と非常に低いので、十分な対策を講じておく必要もあります。
【IT業界ならITパスポート】
「ITパスポート(Iパス)」は、IT活用に必要な基礎知識が問われる試験です。PCの仕組みやセキュリティ、2進数の計算などIT技術に関する問題だけではなく、経営戦略やマーケティングなど幅広く出題されます。
ただ専門性は決して高くないため、合格率は50%と比較的取得しやすい資格と言えるでしょう。
IT業界の営業職なら必要な知識となりますが、エンジニア志望の人には決して必要な資格とは言い難いのです。そのため技術職を目指している人は、より専門性の高い資格取得を目指した方がいいでしょう。
そのほか人気の資格
業務内容に直結するスキルを身に付けられる資格は特に人気が高く、多くの学生が在学中の取得を目指しています。
ここから、代表的な人気の資格を紹介します。
【PCスキルを証明できるMOS】
「MOS」とはマイクロソフト・オフィス・スペシャリストの略称で、以下5種類のアプリケーションソフトの技能を問う資格です。
・Word
・Excel
・PowerPoint
・Access
・Outlook
特にWordとExcelに関する技能は、業務を行う上では欠かせません。入社前にパソコンの基本的なスキルを身に付けておけば、就職活動の時もプラスに働くことでしょう。試験日程も多く、毎月1〜2回実施されています。
種類は「「スペシャリストレベル(一般)」と「エキスパートレベル(上級)」に2種類があります。普段パソコンを扱っていない人は、一般から挑戦してみましょう。
【ビジネスマナーをアピールできる秘書検定】
日常でのマナー・一般常識を学べる「秘書検定」は、秘書を目指す人のみならず、社会人にとってプラスになる資格の一つです。
基本的な礼儀作法に関するノウハウだけではなく、シチュエーションに応じた優先順位の取り方など、問題解決能力が問われる試験内容となっています。
準1級を含む1〜3級までの4等級があり、等級に応じて問われる問題の種類が異なったり、面接試験が含まれたりするので、申し込む前には試験内容を調べておきましょう。
ただ合格率は比較的高く、2級であっても50〜60%の確率で合格すると言われています。
一般常識は社会人であれば知っていて同然な内容なため、企業によっては重要視していませんので、時間に余裕がなければ無理に取る必要はないでしょう。
【営業では必須になる普通自動車免許】
「普通自動車免許」は、営業職・運送業・ドライバーなど職種によっては欠かせない資格です。
東京や大阪など、都心部で暮らしている人にとっては必要でない場合もありますが、仕事で車を運転する場面も出てくるでしょう。例えば営業職で顧客に会うため遠方へ向かう場合、車でなければ移動が面倒な上、非効率です。
普通自動車免許は自動車学校に通う必要があるため、時間に余裕のある在学中に取っておくのが理想です。
またタクシーやバスの運転手を目指す場合、第二種運転免許が必要になります。取得難易度も高くなるので、タクシー・バス業界を志望している人は必要がスキルと知識を調べておきましょう。
【在学中でも取りやすい】
学業と就職活動に加えて、資格勉強をするのは時間的にも難しいです。中には資格取得を諦めている人もいるのではないでしょうか。
企業にとって資格は重要な要素ではありませんが、将来を考えるのは取っておきたいものです。
例えば日商簿記2級は、高校生を受験対象にしているため大学生にとっては決して難しいレベルではありません。また宅建建物取引士はインターネットで講習を行っている専門学校もあるので、大学に通いながら取得するのも可能です。
難関だが需要の高い資格
就職活動まで1年以上ある人や早くから志望業界を決めている人は、難関資格に挑戦してみましょう。
そこで最後に、需要のある難関資格を紹介します。
【人事系資格の最上位 社会保険労務士】
「社会保険労務士(社労士)」は、労働や保険に関する問題解決で問われるスキルを学べる資格です。
人事系資格の中でも最上位に位置しており、難易度も非常に非常に高いです。ただ大学で62単位以上を取得してれば、在学中であっても受験可能ですので、在学中に挑戦してみるのも悪くないでしょう。
ただ合格率は数%程度の上、年に1回しか受験できませんので、取得までは数年かかるかもしれません。
労働・保険のプロフェッショナルである社労士は、どの企業も欲しがる人材ですので、取得できれば就職活動が有利になります。
【転職にも有利な公認会計士】
国家資格「公認会計士」は経理・会計を担当する専門職で、弁護士や医師と並ぶ「三大国家資格」の一つです。有効期限がないため、一度取得すれば失効されることもありません。
また監視業務が厳しくなりつつ昨今では、その需要も拡大傾向にあります。そのため公認会計士は就職活動だけではなく、転職時にも有利に働くことでしょう。
ただ公認会計士になるためには、試験に合格するだけはなく、2年以上の実務経験か、実務補習を受ける必要があります。
資格で就活を有利に進めよう
就活において資格は重要視されない傾向にありますが、TOEICや日商簿記など、企業によっては必須としている資格があるのも事実です。
また企業に入社した後に役立つ資格もあるので、時間に余裕のある人は、紹介した内容を参考に志望業界に合った資格に挑戦してみましょう。
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