企業が求めている長所を知ることが第一歩
自己PRは、ひとことで言えば「自分のセールスポイント」です。企業に対して、「私はこのような人間なので、採用するとこんな“いいこと”がありますよ」というプレゼンテーションを行う場だと考えましょう。ここで大切なのは、自分だけの視点にとどまらず、企業の視点に立ってみることです。
自分のセールスポイントをアピールすることは非常に大切なことですが、「企業がほしがっている人物像」を視野にいれなければ、自己PRをしても空振りに終わってしまうかもしれません。
企業が求めている人物像を理解したうえで、自己PRを考えることによって、企業側の目に止まりやすくなるでしょう。
「チャレンジ精神」は企業にとって嬉しい自己PR
チャレンジ精神をセールスポイントにしようと考えているけれど、本当にこれを主張することがよいことなのか、不安に感じている人もいるでしょう。しかし、チャレンジ精神がある人は、企業に歓迎される傾向が強く、多くの企業側にとって「ほしい人材」なのです。
日本経済団体連合会の調べによると、「選考にあたって特に重視した点」として、「チャレンジ精神」は2017年入社対象者において、第3位にランクインしています。
(参考:https://www.keidanren.or.jp/policy/2017/096.pdf)
つまり、多くの企業が選考時に「何ごとにも挑戦できる気持ちのある学生かどうか」を見ているということになります。これをみずから主張すれば、採用側からみても効率的にほしい人材を見つけることができるため、以下にご紹介するように伝える方法さえ間違えなければ採用につながりやすくなるでしょう。
「チャレンジ精神」とはそもそもなにか
チャレンジ精神という言葉はよく耳にするものの、そもそもどのような意味が含まれているのか、よくわからないという人も多いでしょう。そこで、ここでは「チャレンジ精神」という言葉に込められた3つの意味についてご紹介します。
困難に立ち向かう力
「チャレンジ精神」は、「挑戦しつづける気持ちの強さ」をあらわす言葉でもあります。
仕事をやってみて、思ったように進まないことがあっても、そこであきらめるのではなく、何度でも立ちあがって挑戦することができる力があるという意味も含まれています。仕事では、思うようにいかないことが連続でおきるときもあります。取れると思った契約が取れなかったり、自分ではうまくできたと思ったプレゼンが評価されなかったり……。ダメだったらあきらめるという人がいるなかで、このように困難に立ち向かうことができる人は重宝されるでしょう。
新しいことを始める力
「チャレンジ」というキーワードが含まれていると、いまある課題に挑戦するというイメージが強くなりがちです。しかし、違った角度から見てみると、新しい世界の扉を開くために、一歩踏み出してみる力があるという意味も含まれているのです。それまで誰もやってこなかったような方法を試してみたり、古いしきたりやルールにとらわれずに、結果が出せる新たな方法を生み出したりすることができる。
このような力があると、昔のしきたりで縛られている企業に風穴をあけて、風通しをよくしてくれる人材として期待されるでしょう。それだけではなく、既存の社員では生み出せなかったアイディアを出したり、新しいことを始めたりする力も、企業からは歓迎されるでしょう。
向上心があるということ
「challenge(チャレンジ)」という英語の意味として、「挑戦」以外にも「難しいが、やりがいのある仕事」という意味もあります。英語のchallengeに含まれる上記のような意味合いから考えると、難しいけれど、目標に向かって努力する……すなわち向上心があるという意味も込められているのです。与えられた仕事をこなして終わりではなく、終わっていない人をサポートしたり、もっと難しい仕事に挑戦したり、責任のある仕事をめざしたりすることができる社会人は、どの企業でもほしい人材でしょう。
チャレンジ精神がある人は、いまの自分に満足して終わるのではなく、もっと上を目指してがんばることができる人でもあります。
自己PRでチャレンジ精神を効果的に伝える5つの方法
チャレンジ精神があることは、企業側からも歓迎されることはご紹介してきましたが、ただ単に「チャレンジ精神があります」と伝えても、あなたのよさは十分に伝わらない可能性があります。そこで、ここではチャレンジ精神を企業側に効果的に主張するための方法を5つにしぼって解説します。
なぜ「チャレンジ精神」があるのかを説明する
誰もが持っているものではないからこそ、「どうしてチャレンジ精神を持てるようになったのか」という背景を説明することで、企業側に理解してもらいやすくなります。
たとえば、「部活をしていて結果が出せないことが悔しくて身についた」、「学業でもっといい成績をとりたいという気持ちから身についた」など、挑戦する姿勢が身についた背景や理由があれば説得力が増します。また、元々の性格的特徴としてチャレンジ精神が備わっている人もいるでしょう。
そのような場合は、「幼少の頃からさまざまなことに挑戦してきたことで……」というようにチャレンジ精神があることの背景について簡単に触れて、以下に解説する“具体的なエピソード”の分量を増やすことで、説得力を持たせることができるでしょう。
具体的なエピソードを話す
自己PRを述べるときに、全体的に言えることですが、チャレンジ精神があることを示す具体的なエピソードを述べることも大切です。
ただ「チャレンジ精神があります」と伝えても、抽象的すぎて、面接も履歴書もすぐに終わってしまい、説明不足という印象をもたれてしまうでしょう。チャレンジ精神のエピソードを述べる(書く)際には、チャレンジした内容の質で勝負する方法と、チャレンジした数で勝負する方法の2パターンが有効的です。
たとえば、「部活で結果を出すために新しい練習内容を工夫して生み出した」というような例は「質」で勝負しています。一方、「部活で結果を出すために1日の練習時間を30分から3時間にして、1年間で1,000時間以上練習した」というような例は「数」で勝負しています。どちらも企業側にとっては魅力的に見えるため、自分がアピールする際に用いる例のタイプによって「質」と「数」を使いこなし、より具体的なエピソードになるようにしましょう。
チャレンジすることで得られた結果を明確にする
面接官に「自己PRをどうぞ」と言われて、本当にアピールポイントを説明するだけの学生もまれにいます。しかし、結局のところ面接官が知りたいのは、「アピールポイントのおかげで、どんなことを学んだのか、何を得たのか」ということです。たとえば、「難関の資格を取得することができ、挑戦することの大切さを実感した」「誰も思いつかなかったような手法を試した結果、アルバイト先の受注件数を50件増やすことができた」などの表現が挙げられます。
チャレンジ精神自体は、企業側にとっても歓迎したい要素なのですが、それによって何が得られたのかがぼんやりしていると、採用するメリットがわかりにくいのです。
このようなことがないように、自己PRのまとめの部分では、最終的に得たものや結果を強調することで、企業側に採用するメリットを想像させることができるでしょう。
言い回しを工夫する(言葉を言い換える)
「私には、チャレンジ精神があります」と断言するのもよいでしょう。しかし、何十人、何百人と面接をこなしてきた面接官や、何百枚もの履歴書を見てきた採用担当のなかには、「チャレンジ精神」という直接的な表現をしてきた時点で、「またこのタイプか」と見切りをつけてしまう人もいます。最初の一行、最初の一言で企業側の興味がそこなわれることがないように、他の言葉で言いかえるのも1つの手です。
たとえば「他の誰もやっていないことに挑戦しました」「もっと効率的な方法があるのではないかと考え、さまざまな方法を試した結果、~という功績を残すことができました」「もっと上を目指して~を行いました」などの表現が挙げられます。ありきたりな言葉をあえて避けることで、企業側には興味を保ったまま、最後まで話を聴いてもらえる(読んでもらえる)でしょう。
入社後にどう活かすかを説明する
自己PRの締めの部分では、「最後の一押し」として、入社後に自己PRで強調した点が、実際にどのように活かせるのかについて伝えるのも有効です。
企画・管理部門や、制作、開発部門などを希望している場合は、新たな挑戦を試みる姿勢が、クリエイトに対する姿勢につながりやすいため、特にアピールしやすいでしょう。しかし、どの業種・職種を目指す場合でも、自己PRの「結論」として、企業側に入社後の姿をイメージしてもらうことは大切です。
たとえば、「何ごとにも挑戦する姿勢を活かし、御社の営業の仕事でも常に契約本数の記録更新に挑戦したいと考えております」「常識にとらわれない新しいアイディアを生み出すことで、これまでにない企画をクリエイトして参りたいと考えております」という表現が挙げられます。
入社後にチャレンジ精神を活かせるかどうかは、実際に採用されて働いてみないとわからないことですが、業種や職種と結びつけて話すことで、企業側にはイキイキと働くあなたの姿をイメージしてもらいやすくなるでしょう。
【例文】効果的な「チャレンジ精神」の自己PR
例文①部活動で得たチャレンジ精神をPR
「私には、高い目標に向かって挑戦しつづけることができるという強みがあります。私は中学、高校の6年間に加え、大学の3年間、トータルで9年間吹奏楽に打ち込みました。
そこで私は2つのことを身につけました。1つめは、チームワークを大切にすることです。チームワークがあるからこそ、50名という集団で1つのハーモニーをつくることができました。
2つめは、厳しい練習を乗り切る力です。朝夕計3時間の合同練習を積み重ねることで、努力を継続することができました。
このように、高い目標に立ち向かうことで、難関コンクールで銀賞を獲得できました。目標を高くかかげて努力を惜しまない長所を活かし、御社でも与えられた目標以上の契約を取れるよう、業務にまい進できると考えております。」
あえて「チャレンジ精神」という言葉を使用しなくても、チャレンジ精神が部活動を通して得られたことがわかり、さらにそこから得られたものも分かる例文になっています。
この例のように、得られたものが2つ以上ある場合は、最初に「○つあります」というようにあらかじめ宣言しておくことで、面接の場合は口頭でも理解しやすくなり、履歴書でも構図が頭に入りやすくなります。
例文②アルバイトで得たチャレンジ精神をPR
「私の強みは、新しい取り組みを考え、結果を出せることです。私は、全国チェーンのアイスクリーム屋でアルバイトをしていました。
当初は全国順位の低い店舗だったのですが、様々な工夫を提案し、上位クラスの店舗にランクアップすることができました。
たとえば、アルバイト店員別の売上表をつくり、互いの競争心をあおることで、店舗全体の売り上げを伸ばしました。
またある時は、それまでやっていなかった周辺住宅へのポスティングを行い、クーポンをつけることで集客数を伸ばしました。
これらの新しい取り組みの結果、目標達成率が全国1位を達成することができました。御社では総合職を志望しておりますが、どの職種に就いても、それまでなかった方法で、結果を出していきたいと考えております。」
エピソードを充実させることで、どのようなチャレンジをしてきたのかがわかるようになっています。
また、さまざまな部署を持ちまわる総合職だからこそ、どんな状況でもうまくやっていけることを企業側にイメージさせる「最後の一押し」を入れるのが効果的です。
例文③学業で得たチャレンジ精神をPR
「私は、幼少の頃から負けず嫌いで、特に学業では常にクラスで1位を目指して努力してきました。
大学に入学して、初めて自分よりも成績のよい人たちに直面し、自分の勉強のできなさに自信を失いかけました。
しかし、分からないところはオフィスアワーをねらって教授に質問し、自分よりも成績のよい学生に自ら教えてもらいに行くことで、分からない問題を1つずつなくしていった結果、全25教科の必修科目において、24科目「優」の成績を収めることができました。
あきらめずに努力を続ける力を活かして、御社での仕事でうまくいかないことがあっても、突破口をさがして努力を続けることで、目の前にある課題を乗り越えていきたいと考えております。」
チャレンジ精神が幼少から性格的な特徴として見についている上記のようなケースでは、「くじけそうになったけど、この方法で乗り越えた」というように、打開策をエピソードのなかで具体的に説明するとよいでしょう。仕事では、学業よりももっとうまくいかないことがたくさんあります。それでもあきらめない力があることをアピールできれば、採用に一歩近づくことができるでしょう。
まとめ
チャレンジ精神という言葉のなかには、困難に立ち向かい、新しいことに挑戦し、向上心があるという意味が含まれています。チャレンジ精神という一言で済ませても、コンパクトにまとまってよいかもしれません。しかし、企業側からすれば多少聞き飽きたキーワードでもあり、最初から興味を持ってもらうには力不足になる可能性があります。
そのため、応募書類や面接では、チャレンジ精神が意味することを具体的にして、エピソードを使ってわかりやすく説明し、最後に仕事にどう生かすかに結びつけることが大切です。
この手順を踏むことによって、企業側はあなたを採用するメリットが想像しやすくなり、あなたのチャレンジ精神というセールスポイントも効果的に売り込むことができるでしょう。
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